第64章 #64 マーレ産ワイン
ジークの監視とエレンとの接触を避けるため、彼を馬車に乗せたリヴァイとリリア。
町中を走る馬車の中から民衆の様子を見るジーク、彼らは号外の新聞の内容に盛り上がっていた。
その内容は、先日のマーレでの戦いに勝ったというものだ。
「戦勝、と報じた訳か。恐ろしいねぇ、何も知らないってのは」
「お前を殺して死体をマーレに送りつけ、陰謀を明るみに出す。祖父、祖母の命はないだろうな。だがお前の言う秘策とやらが本物なら切り刻むのを少し待ってもいい。俺はどちらでも構わない」
「寛大なお言葉に感謝いたします。だが、俺とエレンを会わせるのが先だろ?」
「そう急ぐな。お前に最上級のホテルを用意したんだ。まずはそこでゆっくり休んでいただこう」
馬車の中に沈黙が走りリヴァイとリリアの鋭い視線がジークに突き刺さる。
おそらく普通の者では震え上がってしまうだろう。それくらい痛い視線だ。
「……なぁ、睨むの…やめてくれないか」
するとジークはリリアの左腕に注目した。
何故彼女は左腕がないのだろうか。