第60章 #60 君の努力を知っている
兵舎へと戻る途中、キースとのやり取りを聞きハンジは少し悲しげな顔をしてリリアと共に歩いた。
今の訓練兵はリリアの事をそんな風に見ているのかと少々ショックだったらしい。
ハンジはリリアの努力を知っている、しかし現在それを知っているのはハンジ含め、厳しく訓練していた張本人リヴァイと、それを見ていた当時団長のキースのみだ。
「当時の様子を見ていた者からすると、その肩書きだけってのは悲しいねぇ」
「……もう気にしてないよ。確かに今は使い物にならない負傷兵だしね。何で今だに調査兵団にいて兵士長なんだって思われるのは当然かな」
「リリア!そんな言い方嫌いだよ?私はリリアを使い物にならないなんて事思ってないし、てか今の訓練兵よりリリアの方が強いからね?片腕でも!」
「アレかなー、リヴァイと婚約したのがまた火に油を注いだかな。リヴァイファン多いから」
「知るかーー!!そんなもん!!ただの嫉妬だ!」
ハンジはリリアから手を離すとズンズンと力強く歩み、クルリと振り向いた。
「リリア・スミスは当時の調査兵団全員が認めた兵士長だ!侮辱は私が許さない!!ホントに……死ぬんじゃないかって…」
「ハンジ?ちょっと?泣いてる?わ、私そんな……大丈夫だからね?」
慌てて駆け寄るとハンジはリリアを力一杯抱きしめた。
リヴァイとの訓練があまりにも厳しすぎて本当に死ぬのではないかと当時言われていたくらいだ。
あまりの酷さにエルヴィンがリヴァイを止める事も度々あった。
それでも彼女は諦めず、強くなりたいがために必死にリヴァイにくらい付いていた。
そしていつの日かリヴァイがリリアを認め、調査兵全員が彼女の兵士長昇格に賛成した。
皆が、リリアの努力を見ていたのだから。
それをそんな風に言われるのはハンジにとってもツライ事だ。
「リリアは頑張ったよ。私は知ってる。誰が何と言おうと君は素晴らしい兵士長だ」
「……ハンジ、ありがとう」
「だからリリアがリヴァイと仲良くなった時は凄く嬉しかったんだ」
ハンジはリリアから少し離れると頭を撫でた。