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誰が為に心臓を捧げる【進撃の巨人】

第55章 #55 エレンの失踪


次の日、アズマビトが準備した船に乗りリリアだけがパラディ島に帰還する事となった。
船の前にはここに共に来たメンバーが集まっている。皆の表情はとても暗い。

「みんなー、暗くない?私帰るだけだよ?」
「だって……なぁ?」

コニーが皆を振り返る。
この強制帰還はリリアを尋問するためのもの、始祖の巨人を逃したリリアにどんな仕打ちがあるのか分からない。
しかもハンジもリヴァイも側にいられず、104期のメンバーも一緒に戻れないとなると、誰が彼女を守ればいいのか。

「大丈夫だって!それより皆も気を付けて。エレンの事はよろしくね」
「……はい」

リリアは少し離れていたリヴァイに目を向けた。

「リヴァイ、またね!ハンジの事しっかり支えてね」
「………」
「ちょっとリヴァイ!!なんか言いな!」

隣にいるハンジが肘でリヴァイを突く。
しかしリヴァイは口を開く気配がない。

「ハンジ、いいの!それじゃあ皆、バイバイ!!先に帰ります!」

すると全員がリヴァイの方を見た。

「リヴァイ兵長!!!ほら!!何か言わないと!!リリア兵長行っちゃいますよ?!もう暫く会えないんですよ?!」
「……ヘタレ」
「っ?!」

ボソッと言い放ったミカサに皆が固まる。
すると息を吐きリヴァイが小さく呟いた。

「泣いちまったらどうすんだ……俺が」
「兵長の方ですか?!えっ、リリア兵長の方じゃなくて?!」

ブッとリリアが噴き出し笑う。
もう十分だ。リヴァイの気持ちは分かっている。本当はこの中で一番寂しがっているのかもしれない。
皆の手前、表に出せないだけだ。

「それじゃあね!!また会いましょう!」

リリアが乗船すると少しして船が動き始めた。
皆は手を振りリリアを見送る。
何かがあっても直ぐには行けない、こんな遠くに離れ離れになるのは初めてだ。
リヴァイは俯いた。

「…ん?リヴァイ泣いてる?」
「泣いてねぇよ」
「私達はここで出来る事をしよう。エレンを見つければリリアの責任も軽くなる筈だしね!頑張ろう!!」

ハンジが拳を上げると104期のメンバーも「おー!」と拳を上げる。
しかしリヴァイの表情は晴れない。心配そうに小さくなっていく船を見つめていた。


リリア……
どうか何もない事を祈る


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