第55章 #55 エレンの失踪
「エレン……」
「ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい……」
その瞬間、ゴキッという鈍い音がし、リリアが目を見開いた。
エレンに全体重をかけられ、壁に当てていた右手首が折られてしまった。
「いっ……あぁあぁぁあぁ!!!」
痛みで崩れ落ちたリリアから離れたエレン、怯えたように後退り、涙を流しながら肩で息をしている。
「エ…エレン!!!」
「ごめんなさい………」
身を翻しその場から立ち去ろうとしたエレンだったが、リリアは歯を食いしばり立ち上がった。
ここでエレンを止めなければ、一人にさせるわけにはいかない。
痛みを堪えてエレンの足に飛びつき、止めた。
「エレン!!行っちゃダメ!!一人で行っちゃダメ!!」
「は、離してください!!」
「何で話してくれないの?!エレン!!!」
「うわぁあぁぁぁあ!!!」
エレンは泣きながら自分の足にしがみ付いているリリアの手首をもう片方の足で蹴り飛ばした。
リリアに意識が飛びそうな程の激痛が走り、手を離してしまった。
その隙をつきエレンは走り出した。
追いかけたかったが、あまりの痛みに意識が朦朧とする。
手はもう完全に折れてしまい動かない。蹴られた手首はあり得ない方向に曲がってしまっている。
起き上がれないリリアの視界はそのまま暗くなっていってしまった。
「エレン………待って……」