第51章 #51 偽物の好き
その日はとても暑い日だった。
日光がガンガンに照り、何もしなくても汗が出そうな程。
今日は104期のメンバーが鉄道作りをすると言うので、エレンの護衛にリリアも付いていく事となった。
「ひぇぇぇ……もうあっつ…」
「リリア、帽子かぶって行けよ」
リヴァイが窓から外を眺めているリリアに声を掛け、麦わら帽子を被せる。
肩掛けカバンにタオルと飲み水、着替えを詰め込み肩に掛け、さらに長袖のシャツを着せてきた。
「あーつーい!!」
「お前は日に焼けると真っ赤になるだろうが。肌はなるべく出すな。あと水は喉が渇く前に飲めよ、乾いてからじゃ遅いからな」
「分かってるよ、もう!!リヴァイ最近お兄ちゃんみたい…」
「あ?誰がエルヴィンだ」
「違う、私で言うとお兄ちゃんだけど…世間的にはお母さん?親?世話焼きすぎ…」
口を尖らせ視線を逸らすリリア、最近は特にリヴァイの世話焼きが過剰なように感じる。
「いいから行け!部下を待たせるなよ」
「早めの行動は私の得意分野です!!もー!!行ってきます!」
少々口うるさいリヴァイにベッと舌を出し、リリアは部屋を出た。
集合場所に向かう途中、曲がり角で誰かとぶつかりそうになり、リリアは足を止めた。
その人物は自分よりもかなり背が高く、見下ろされるのに少し威圧感を身に受けてしまう。
イェレナだ。
「イェレナ、ごめんなさい」
「いいえ、こちらこそ。おや、可愛い格好ですね。どこかへお出掛けですか?」
「鉄道作りの手伝いに……これは…リヴァイが着せてきて…」
恥ずかしげにリリアは下を向いた。
「あのリヴァイ兵長と仲がよろしいのですね。恋人同士ですか?」
「え?恋人?……あ、いや……ん?」
リリアが悩む。そう言われるとリヴァイと『恋人になりましょう』や『付き合いましょう』など言った覚えがない。
ごく自然に今の状態になったために、イェレナからの質問に困ってしまった。
「あ、それかアレですかね。習性的にあなたの事が好きなだけなんですかね」
「……はい?」
習性的とは一体どういう意味だ。