第42章 #42 お帰りなさい
時計は深夜を指していた。
部屋は静かで、ベッドで眠っているリリアの寝息だけが聞こえている。
その寝顔を机から頬杖を付いてジッと見つめているリヴァイ、まさか今日リリアの返事を聞く事になるとは思わなかった。
本当は返事を聞くのが恐ろしかった。
自分の事など何も思っていない、必要ないと言われたくなかった。
だから強制的に自分の事を好きだと言わせようとした。
しかしリリアからの返事はリヴァイと同じものだった。
"これからもずっとずっと一緒にいようね"
かなり嬉しい言葉だ。
「むぅ……リヴァイ……」
その寝言にリヴァイは立ち上がると、ベッドの端に座りリリアの頭を撫でた。
その時の彼の表情は今まで誰も見た事がないような、優しいものだった。
トロスト区の巨大な槌から巨人を潰す音が聞こえなくなったのは雪の降り積もる頃だった。
積もった雪が溶け出す頃、兵団はウォール・マリア内の巨人は掃討されたと発表した。
トロスト区から昇降機が解放され、街道の舗装事業が開始される頃には草花が芽吹き、蝶が舞っていた。
避難住民が故郷へ帰る事を許されたのは、トロスト区襲撃から一年が経過する頃であった。