第37章 #37 夢の終わり
その頃、リリアは今にも崩れ落ちそうな廃屋の中にいた。
屋根もなく、壁もあちこち剥がれ風が吹き込んでくる。膝を抱え寒さに耐えながらリリアはジッとしていた。
ここはリリアの本当の家、虐待を受け苦しんでいた時にエルヴィンに助けられた場所だ。
お兄ちゃん、私と賭けをしよう
お兄ちゃんがリヴァイを認めて私を託したと言うのなら
それを確認させてほしい
彼がここに来たら
私はリヴァイを信じてもう少し生きてみる
もし来なかったら
お兄ちゃんが迎えに来て最初の約束通り私を連れて行って
風が吹くとガタガタとボロボロの廃墟が揺れる。
気温はどんどんと下がっていき、リリアの吐く息は白い。
服装は薄い布の病院から支給されている服、足は裸足で傷だらけで出血している。
リリアはただジッと隙間から見える暗くなった空を見上げていた。
(お兄ちゃん……早く…早く……迎えに来てよ……寒い…)
カタカタと体が震える、寒くて、寂しくて気がおかしくなりそうだ。
(お兄ちゃん……お兄ちゃん、お兄ちゃん……)
どうか昔のように助けに来てほしい、抱きしめてほしい、ずっとずっと……側にいてほしい
(お願い……お兄ちゃん…迎えに来て……お兄ちゃん…)
ジワリと目に涙が溜まり、ポロポロと頬を伝った。
分かっている、分かっているのだ。
どんなに待った所でエルヴィンは来ない、エルヴィンは死んだ。もう自分がどれだけ泣こうが、喚こうが、手を伸ばそうがその手を取ってくれる事は二度とない。
「…お……にい……うっ…うっ……」
その時だ。
ガタガタと物音がし、廃墟の木材をバキバキと壊しながら誰かが中に入ってきた。
邪魔な木材を足で蹴り飛ばし、息を切らせながらリリアの目の前に現れたのはリヴァイだった。
「いた!!探したぞ、馬鹿野郎!!」
あぁ、そうだ……
エルヴィン・スミスは博打に強い男
勝てるはずがなかった
彼を視界に入れた瞬間
リリアの胸の中の何かが弾けた