第31章 #31 夢のため
その日、部屋にはピクシス、エルヴィン、ハンジ、リヴァイとリリアが集まっていた。
先日、リヴァイがケニーから手渡されたという巨人になる注射の瓶の中身の解析結果を聞く事になっており、最後、ザックレーが部屋へと到着した。
「遅れてすまんな。それで?瓶の中身は解明出来そうなのか?」
「それがどうも…我々の技術ではこれ以上探る事は出来ないようです。エレンとヒストリアから聞いたように人間の骨髄液由来の成分ではあるようですが、この液体は空気に触れるとたちまち気化してしまい分析は困難です」
ハンジが机の上に置かれた注射器と液体の入った小瓶が入れられた箱を見ながら、解析の結果を伝えた。
今の技術では分析は無理だったようだ。
「やはり我々の技術とは比較にならない程高度な代物です。レイス家が作ったのだとしたら、一体どうやって…」
「うむ。ならば下手に扱うよりも当初の目的に使用するしかなかろう」
「すると誰に委ねる。エルヴィン、君か?」
ザックレーはエルヴィンを見たが、エルヴィンは首を振り、無くなった右腕にそっと触れる。
「いえ、私は兵士としては手負の身です。この箱は最も生存確率の高い優れた兵士に委ねるべきかと」
するとエルヴィンはリヴァイの方を見た。
人類最強と呼ばれている彼なら、一番生存確率が高い。
「リヴァイ、引き受けてくれるか?」
「任務なら命令すればいい。何故そんな事を聞く」
「これを使用する際はどんな状況下か分からない。つまり現場の判断も含めて君に託す事になりそうだ。状況によっては誰に使用するべきか、君が決める事になる。任せてもいいか」
「生存確率の高さで言ったらリリアも高いだろ」
「リリアはダメだ」
エルヴィンは即答した。