第28章 #28 戻りたくない
朝になり、風にパタパタと靡いているシーツをリリアはぼうっと眺めていた。
そんな彼女を後ろから見つめるエルヴィン、起きてからリリアの体調があまり良くない。
どうやら昨夜少し無理をさせてしまったようで、熱があり体が怠いという。
しかしリリアは大丈夫と笑っていた。
「リリア、体が冷えるから中に入りなさい」
「大丈夫だよ?」
「朝食を作ろうと思ったが食材がない。買ってくるから待っていてくれ」
「私も行く!」
「具合が悪いだろう?」
「大丈夫、一緒に行く!置いていかないで」
リリアは言い出したら聞かない、エルヴィンは苦笑いをすると分かった、と許可をした。
少し厚めに上着を羽織らせ、二人は市場へと足を運んだ。
まだ朝早いが人が多い、エルヴィンはリリアの手を握りはぐれないように自分に引き寄せた。
エルヴィンを見上げると頬を染め嬉しそうに微笑むリリア、握った手が温かい。
「何なら食べられる?」
「うーんと…果物」
「分かった」
二人で果物を選んでいると、店主の女性がエルヴィンを見て声を掛けた。