第3章 #03 エレンの審議
「なぁエレン、俺を憎んでいるか?」
「い、いえ、必要な演出として理解しています」
「なら良かった」
「しかし限度があるでしょ、歯が折れちゃったんだよ?」
ハンジの言葉にリリアが目を丸くする。
歯が折れるほどの事をやったのか。
「ほら!」
拾っていたエレンの歯をハンジが見せる。
「拾うな、気持ち悪い」
「これだって大事なサンプルだし」
「エレン、こういう奴らに解剖されたりするよりはマシだろ?」
「一緒にしないでほしいな、私はエレンを殺したりはしない」
エレンは自分の歯を見て動揺した様な表情をしていた。
すると何故かウキウキしたようにハンジがエレンを覗き込む。
「ねぇ、エレン!ちょっと口の中見せてみてよ」
ハンジは歯が折れた部分を見たいらしい。
エレンは躊躇しながらも大きく口を開けてハンジに見せた。
折れた歯の箇所を見たハンジが目を丸くする。
ないはずの場所にはすでに……
「……もう歯が生えてる」
一同は一瞬時間が止まったかのように沈黙したが、エルヴィンがそれを破った。
「エレン、君にはリヴァイ班に所属してもらう。リヴァイ兵長監視下の元、旧調査兵団本部へ移動し時期が来るまで準備をしていてくれ」
「準備……ですか」
「リヴァイが不在の時や必要な時はリリアを監視につけさせてもらう」
エレンがリリアを見る。
以前から彼女の噂は聞いていた。
エルヴィン団長の補佐をしていてリヴァイ兵長が認める程の戦闘力がある、と。
何より感情をあまり表に出さないために逆に怖いとも人は言う。
しかし見ているリリアの表情は柔らかく、噂に聞くような威圧感は全くない。
とても笑顔が似合う優しい女性だ。
「あの……よろしくお願いします、リリア兵長」
「よろしくね、エレン」
向けられた笑顔にエレンが目を見開き頬を赤く染めると、それを隣で見ていたリヴァイが面白くなさそうにチッと舌を打った。