第15章 #15 離ればなれの不安
トロスト区に戻るとエルヴィンはリリアを病院へ連れて行こうとしたが、何故かリリアはそれを拒んだ。
体は確かに痛いが、我慢は出来る。
今はエルヴィンの側にいたかった。
団長室に向かったエルヴィンはとりあえずリリアをソファに座らせ自分も隣に座り、心配そうに顔を覗かせた。
「本当に病院に行かなくて大丈夫なのか?」
「うん、それに今日はお兄ちゃんと一緒にいたいし、また明日になったら忙しくなりそうだし……それに…」
リリアはエルヴィンの右手を取った。
「なんか……不安」
「不安?」
「うん」
手に取ったエルヴィンの右手の指にリリアがソッと唇を当てる。
その瞬間にエルヴィンの心臓がドクンと高鳴った。
以前にもこんな事があった。
エルヴィンは少し動揺したのか、リリアから腕を引いた。
「リリア、とにかく休みなさい」
「お兄ちゃん」
甘えたいのかリリアが両手を伸ばしてエルヴィンを求める。
エルヴィンが戸惑いながらもリリアを抱きしめるとリリアは腕を背中に回してエルヴィンに抱きついた。
少しだけ力を込めると耳元でリリアがあっ、と声を漏らす。
その囁いたような声に鳥肌が立ち、エルヴィンは慌ててリリアから離れた。
「す、すまない……力が…」
「大丈夫、ちょっとだけ痛かっただけだよ。お兄ちゃん大丈夫?耳が真っ赤」
この行動がわざとなのか天然なのか、エルヴィンは大きく息を吐いた。