第12章 #12 女型の正体
次の日の早朝、リリアは医師の元を訪れていた。
「先生、痛み止めの薬って強いのありますか?」
「リリア兵長、実はね。痛み止めなんだけど今日で出すのが最後になるんだ」
リリアが首を傾げる。
「申し訳ない、エルヴィン団長に明日以降リリア兵長に痛み止めを渡すなと言われてたんだよ」
リリアが固まる。
あぁ、先手を打たれた……
病室に戻るとエルヴィンがすでに来ていた。リリアの気配に気付いたのかゆっくりと振り返る。
「リリア、おはよう。どこに行っていた?」
「……おはよう!ちょっと外の空気を吸いに」
リリアはニッコリ笑った。
そうか、とエルヴィンも笑顔を返し、手を差し出した。
リリアがその手を取るとエルヴィンはギュッと力を込め握った。
痛みにリリアが顔を歪める。
「痛いか?」
「別に?大丈夫」
わざとだ。
本当に敵に回すと嫌な人だな、リリアは大きなため息をついた。
「明日は朝に王都へ向かうようになる。迎えに行くから準備をして待っていなさい」
「うん」
エルヴィンがリリアの肩を掴み、耳元でさらに追撃する。
「大人しくしていろ、いいな」
「もー!!!!」
リリアがエルヴィンを突き放す。
「分かった!!お兄ちゃん、しつこい!!」
「ならいい」
エルヴィンはリリアの頭を撫でるとその場から去った。
向かったのは兵舎、リリアの部屋だ。
エルヴィンは部屋に入ると立体機動装置を探した。
前回の壁外調査で使った立体機動装置は持ち帰れなかったが、まだ予備があるはず。
しかしどこを探してもリリアの立体機動装置がない。
「………まだ兵舎には戻っていないはずだが…どこにやった」