第1章 不良少年とビッチ(?)なあの子
今日もただ授業を受けて、休み時間にはヒソヒソと噂をされる日々。
元々群れるのも、馴れ合うのも好きじゃないから、友人がいないのは今更だし、特に支障はないから楽でいいけれど。
ありもしない噂をされるのにも、だいぶ慣れてしまったけれど、いつものようにまた、同じようなつまらない一日が始まる、はずだった。
昼休み。昼食を終えて教室へ向かう為に、校舎裏近くのグラウンドの傍を歩いていると、グラウンドからは明るい男子達の声が聞こえてくる。
特に何も考えず、チラリとグラウンドを横目に見る。
見た事がある男子達、恐らくクラスメイトだろう。楽しそうにサッカーをしていた。
その中の一人を、私はよく覚えていた。
男女共に人気者の不良少年。不良なのに、人当たりも良くて、誰にでも分け隔てなく接するし、親切でいい人だとクラスの子が言っていたのを聞いた事がある。
ちゃんと見た事はないけれど、おまけに垂れ目のアンニュイなイケメン君ときてる。そりゃ、モテるだろう。
楽しそうに笑ってるなぁと思いながら、グラウンドから目を離した時だ。
「あ、やばっ! 危ねぇっ!」
大きな声がして、自分に掛けられた言葉だなんて微塵も思っていなかった私は、気にする間もなく右腕に衝撃を受ける。
「ぃたっ……」
結構キツめに飛んできたボールが腕に直撃して、よろけて座り込んでしまった。
肩と腕がヒリヒリする。
「悪いっ! あんた、大丈夫かっ!?」
腕を押さえる私の背中に手が添えられた。
見上げると、綺麗なオッドアイが目に入る。
珍しい目から視線が外せなくて、じっと見つめていると、彼の頬が微かに赤くなった気がした。
「あ、大丈夫。気にしないで」
「で、でもよ、結構強く蹴っちまったから、だいぶ痛かったんじゃね?」
心底心配そうに見る顔は、まるで捨て犬みたいで、元々からの垂れ目が更に垂れてしまったみたいで、少し可愛いと思ってしまった。
あ、泣きぼくろと口元にもほくろがあるんだな。何だか、エロいな。
そんな事を私が思っているなんて、多分彼は思いもしないだろう。
「そうだ、保健室っ!」
「だから大丈夫。大袈裟」
立ち上がってスカートについた砂を払う。そして、近くに落ちていたボールを拾って彼に手渡す。