The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第5章 聖夜決戦
ー和泉sideー
あの後、武道は佐野先輩に連れられて何処かへと行ってしまい、その場には龍宮寺先輩とエマと日向と隆さんと私だけとなってしまった。
「ヒナ。ありがとう、馬鹿な武道を許してくれて」
「ううん。あ!ていうか、三ツ谷君も和泉ちゃんも怪我してるけど喧嘩したの!?」
「あー……うん」
「誕生日だったのに!?」
「有り得ないよね、ヒナ!誕生日にフツー、喧嘩する!?」
これは説教されそうだなと思いながら隆さんへと助けの目線を向ければ、彼は何処かバツの悪そうな表情をしている。
「もー!頬も腫れてるし、せっかく可愛い格好してるのに」
「三ツ谷ぁ。オマエ、ヨメに怪我させんなよ」
「させたくてさせた訳じゃねぇよ」
不機嫌そうに顔を歪める隆さんに、私は苦笑を浮かべながらふとマンションの方へと視線を向ける。
一人の男性が心配そうにこちらを見ていて、その視線がヒナへと注がれていた。
ヒナのお父さんかもしれない。
そう思いながらヒナの肩を叩いてみる。
「なぁに?」
「あそこ、お父さんが心配そうに見てるからそろそろ帰りな」
「あ……」
「お父さんもさ、ヒナの事を考えたんだと思う。やり方は良くなかったかもだけど、あまり責めてあげないで」
「うん……ありがとう、和泉ちゃん」
「ん」
ヒナは気まずそうにマンションの方を見上げると、こちらに手を振りながら自宅へと帰って行った。
ヒナを見送っているとエマがこちらに来て私の腕を抱き締めてくるので首を傾げる。
「明日、ウチの家に来てよ」
「佐野家に?なんで?」
「和泉の誕生日祝いするの!ホントは誕生日の日にお祝いしたかったけど、三ツ谷に独り占めされたから」
「独り占めって……」
「だから、来てね。久しぶりにちゃんと和泉の誕生日を祝いたいの」
エマは『約束だからね』と頬を膨らませる。
その表情が小さい時から変わらないな……と思いながらも頷いた。
「分かった。明日ね」
「約束だからね。三ツ谷、ちゃんと和泉連れてきてよ」
「わかった」
「じゃあ、オレらもそろそろ解散するか。三ツ谷ぁ、ちゃんと手当しろよ〜」
「言われなくても分かってる」
それから、私達もその場で解散した。