The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第5章 聖夜決戦
「寒っ…」
冬の訪れを知らせるかのように、冷たい風が和泉の頬をゆっくりと撫でていく。
寒がりな彼女はカーディガンでは足りず、パーカーまでを羽織っていた。
そんな彼女は今、寒さに耐えながらとある場所へと向かっていた。
それは『柴家』であり、学校帰りに本屋にいた彼女に柚葉から連絡があったのである。
『今さ、花垣タケミチと日向ちゃんといるんだよ。で、今からウチに行くんだけど和泉も来なよ!住所、メールで送るからさ!』
最初は驚いた。
接点が無いはずの八戒と柚葉と何故、武道と日向が一緒にいるのだろうかと。
取り敢えず、行くとだけ伝えて向かっている最中である。
「あの4人、どっかで出会ったのか……?」
そう呟きながらも寒空の中、柴家を目指して歩いていれば、見知った後ろ姿を見つけた。
「柚葉!」
声を掛けてみれば、見知った後ろ姿はこちらへと振り向く。
そこに居たのは柴姉弟と武道に日向であり、武道以外は笑顔で和泉を迎えた。
だが、武道だけは気まずそうな悲しそうな表情を浮かべている。
何か様子がおかしい。
和泉は武道が何時もの、学校で別れた時と様子が違う事に気が付いた。
(まさか……)
ふと、ある事に気が付く。
もしかして今の武道は、12年後の武道なのではないかと。
「和泉!早かったじゃん!」
「ちょうど近く歩いてたからね。まさか、武道と橘が一緒にいるなんて思ってなかったけど…柚葉と八戒、2人と仲良かったけ?」
「いいや。さっきボーリング場で会ってね」
「ああ……ボーリング場」
武道はこの時ボーリングにドップリとハマっていた。
それでボーリング場に居たのだろうと考えた和泉はチラリと武道の方へと視線を向ける。
そして彼へと近寄ると耳元で話しかけた。
「オマエ、未来の武道だろ」
和泉の言葉に武道は大きく目を見開かせる。
動揺で瞳を揺らしながらも、静かに1回だけ頷いて見せた。
そんな彼に和泉はまた未来で何か起きたのだなと確信して、静かに瞼を閉じる。
失敗したのか。
そう思いながらも、武道の背中を叩いてから柚葉達の方へと視線を向ける。
「にしても、お前が柚葉と八戒と出会うなんてな」
「あーまぁ…」