The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第1章 泣き虫ヒーロー誕生
そう言って歩こうとした時である。
腕を掴まれて引っ張られたので、眉間に皺を寄せながら振り向けば捨てられた子犬のような…泣きそうな表情をした青宗がいた。
「待ってくれ、和泉っ……!!その、言葉が悪かったりした…でもオレは、オレは和泉に黒龍に居て欲しくて…」
「………はぁぁ」
子犬のような顔をしないでほしい。
俺はそう思いながら深い深い溜息をついてから、掴まれていない左腕を上げて手で顔を覆った。
鳴海ねぇが大切にしていた黒龍を放置するのか。
その言葉は俺にとっては地雷…ではないが、後悔の念が押し寄せる物だ。
(黒龍に入っていれば、『八代目』の行動は止めれていたかもしれない。黒龍に汚名がつかなかったかもしれない)
だからついカッと来てしまった。
人は自分が嫌な所を突かれると苛立ちが見えたり、怒りを表にするが俺もそうなのだろう。
「言葉がキツかったな…悪い。でも俺は黒龍には入らない」
「和泉…」
「俺の黒龍入は諦めろよな」
すると青宗は泣きそうな子犬の顔から、少し不機嫌な表情へと変わった。
意外と無表情ぽいのに表情がコロコロとたまに変わるのが面白い。
(後ろでずーとニタニタしている奴は可愛くないけどな)
九井は出会った時から苦手である。
当然目の前に現れて、嫌な発言された過去があるから苦手というよりも嫌い寄りであるのだ。
「分かった。でも諦めない」
「いや、そこは諦めろよ」
「諦めない」
「諦めろ。お前大概執拗いよな…ネチネチしてる奴は嫌われんぞ」
「和泉も嫌いか?」
「嫌いだな。て事で諦めろ」
と言っても青宗は根深いほどの執拗さ。
諦めないだろうな…と思いながら溜息を零してから、次は何も言わずに背中を向けて歩き出した。
諦めてくれるのが一番。
にしても青宗がここまで俺に執着するのは、やはり『鳴海ねぇみたいに出来るかもしれない』と思っているからなのだろうか。
「和泉!!オレは絶っ対ぇ諦めねぇからな!!」
「イヌピーは執拗いぞ!!!」
「うるさ……。執拗過ぎるだろ、あの幼馴染共」
因みに青宗と九井は幼馴染と聞いている。
幼馴染2人して執拗い所があるから、似たもの同士なんだろうなと嫌になってしまう。
「さっさと諦めてくれよ……ホント」