The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第3章 8・3抗争
廊下を渡り、庭を見ればおじいさんが草木に水をやっている後ろ姿が見えた。
そして声をかけようと口を開いたが、気配かもしくは足音で気づいたのだろう。
おじいさんは俺が声をかける前に振り返った。
「帰るのか?」
「はい。急に来たのに泊まらせてくださりありがとうございました」
「こちらこそ、来てくれてありがとうな」
優しく柔らかい笑みを浮かべながら、おじいさんはこちらにやって来ると廊下に上がった。
そして手を伸ばしてくると俺の頭を何故か撫で始める。
数回撫でると、その手を下ろしてから目元を細めさせながらまた微笑んだ。
その笑顔は幼い時に見た頃と何も変わらない。
「またおいで」
「………はい」
罪悪感とまた来ていいと言われた喜び。
複雑な心境のまま、庭を後にして玄関へと向かえばエマと佐野先輩に龍宮寺先輩がいた。
「和泉、またご飯食べに来てね!三ツ谷の味に飽きたらでも良いし!」
「飽きなくても、また食べに来る」
「三ツ谷によろしくな〜」
「じゃあ、また来いよ。イズミっち」
こうやって人に見送られるのは、三ツ谷先輩の家と武道の家ぐらいだと思っていたが…。
違う家でもこうやって暖かく見送られるのだな。
「はい。お邪魔しました」
暖かい見送りに心が暖かくなりながら、佐野家を出て太陽で焼き付いたアスファルトの上を歩いていく。
上からも下からも暑い熱射が頬を焼いていくのが、本当に煩わしい。
暑い、暑い。
それしか考えられずに歩いている時であった。
背後から知っている気配を感じて、足を止めてから振り返る。
「相変わらず、後ろから付けてくるんだな」
「お前は相変わらず、気付くの早いな」
「オレ達が後をつけすぎたからか?」
「気配と匂いだな。九井の胡散臭い香水の匂い」
後ろには、真っ白な特攻服を身につけた九井と青宗。
相変わらず血が着いたら目立ちそうな特攻服だな…と呆れ顔を浮かべる。
「胡散臭いはないだろ」
「事実だ。それより、今日は何の用だ…」
「ボスがお前を呼んでる」
「ボス……」
九井がボスという人間は一人。
10代目黒龍総長・柴大寿しかいない…その柴大寿が俺を呼んでいる事に怪訝な表情を作る。
今まで柴大寿に呼ばれた事は無い。
九井から、黒龍に入るよう言っているとは聞いた事はあるが…。