第3章 堕天使の舞踏会
安堵した瞬間に、ハンジの後ろから
黒い旋風のごとく近づいてくる人影が目に入る。
ヒヤリと背筋が凍り付く。
鼓動がゆっくりと刻み、時の流れが緩やかになる。
まるで時間が止まったような世界に引き込まれた。
体勢を低く飛び、自由の翼を背負って
マントをはためかせ、鋭く三白眼が光り輝いている。
月の光が雲をかき分けリヴァイだけに降り注ぐ。
幻想的に輝きを増して
動きの一つ一つに美を纏っている。
旋風のごとく疾く動いているのに、
息をごくり。とゆっくり呑んで魅入ってしまう。
フィンの瞳には
自由に飛んでいる鷲のようにみえる。
一粒の雨がフィンの頬を濡らして、
現実へと引き戻した。
再び忙しない世界へ時間は流れ始めた。
鬼神の面を被ったかのような表情で、追跡してくるリヴァイに怖気付く。
一瞬降参する選択を選びかけた。
ノインとの必ず帰ると約束が脳裏によぎった。
いま、自分が諦めたら、
自らが望んで助けようとしている人々は
絶望という地の底から這い上がれないだろう。
自分の本来の目的を思い出し、
自身を強く鼓舞して奮い立たせた。
全身の力がみなぎる。
頭の先から足の指先まで
全身の血が駆け巡っているのを噛み締めながら、
ギュッと力強くトリガーを握りしめた。
数秒の出来事なのか
数分経っただろうか。
体の全神経を集中し感覚が研ぎ澄まされているが、
意識が飛びそうでどのくらいの時間が経ったか分からない。
猛攻と追跡を続けてくるリヴァイは確実に距離を詰めて、
今にも背後からフィンに食らいつこうとしている。
瞬速に動くなか、なにか鈍く光るものを捉えた。
遠くの建物の上、そしてまた別の窓の中から、少なくとも三つの光が見えた。
一瞬だったが時間の流れがゆっくりと流れ、それが何で誰を狙っているかすぐに理解した。
考える間もなく本能で体を突き動かす。
体をありったけねじって半ば強引に方向転換する。
間に合って!!!