第3章 堕天使の舞踏会
フィンはとっさに受け身をとったが、
飛んできたそれは赤い煙を発しているものだった。
赤い煙!?何故っ!?
予想外の煙に困惑する。
とにかく一刻も早くこの場から消えようと
冷たい風が吹き抜ける中、城壁に身を翻し飛ぶ。
視界に入った夜空は暗雲が立ちこめていた。
今にも激しく降り出しそうに雨を雲は苦しそうに溜め込んでいる。
男が最後の悪あがきとして煙を打ったのかと考えながら、宙を回転し飛びあがる。
真っ先に安易な考えは打ち消された。
薄暗い月明かりが背後の影を映し出す。
フィンの背後を何者かが飛んでいる_____
慌てて体勢を立て直し、
なんとか背後からの追跡をかわした。
「へぇ~。
ホントに立体起動の扱いが上手なんだねぇ」
と聞き覚えのある声がした。
月夜に照らし出され、ゴーグルが妖しく光る。
昼間の雰囲気とは違う、調査兵の顔をしたハンジだった。
まさか本当に出逢ってしまうなんて‥‥。
フィンの胸はチクリと痛む。
すぐにハンジから視線を外し、遠くを見据えて、
逃亡の道筋を目視する。
ハンジのあとを追いかけて数名の調査兵団が駆けつけてきた。
逃げられるのか‥‥不安がフィンの頭をよぎる。
ううん、私なら飛べるから!!
強く確信して、アンカーを硬い壁に突き刺す。
ワイヤーを巻き体を夜空へと加速させる。
「だんまりしてないで、おしゃべりしようよ!
話を聞かせて!
痛いことはしないから!!」
とハンジは明るい声色で言ってくるが、顔には声色とは反対の黒い考えが浮き見える。
ハンジの目は全く笑ってない。
こんなこわい人だったんだ。とフィンは自分に以外に余裕を感じる。
でももし捕まったらと考えただけで身震いする。