第18章 馬車に揺られて
「‥…本当に何も覚えていないのか?」
エルヴィンの表情は少し寂しそうに見えた。
「全く覚えてないです‥‥」
申し訳なさそうに呟いた。
そうか…。
とエルヴィンがため息を吐きながらベッドから大きな体を起こした。
ベッドの横の木棚に置いてある、
水の入ったコップをフィンに差し出した。
「ありがとうございます ‥‥。」
「よかった、ちゃんと水を飲んでくれて」
エルヴィンが微笑む。
コップに口をつける。
水が二日酔いの水分不足の体に染み渡る。
一気に水を飲み干すフィン。
「昨日みたいにいい飲みっぷりだ」
エルヴィンがくすりと笑う。
相当の量を飲んでしまったんだと、フィンは反省する。
断片的な記憶でエルヴィンに酷く絡んだ気がする。
でもこれ以上聞くとエルヴィンと気まずくなりそうで
フィンは口を噤むことにする。
ふと遠くのソファーでナイルが
大きくイビキをかいている様子が見える。
ナイルさん、あんな所で寝てる。
フフっとフィンは笑みをこぼす。
「・・・・・フィン、
キミは男とベッドにいるんだ。
よそ見しないで、もっと危険を感じるべきだ。」
「え?
エルヴィンさんは、そんなことしないですよね・・・?」
ギシリ______
ベッドが大きく揺れる。
エルヴィンがフィンの腕を掴んで優しく柔らかいベッドへ華奢な体を押し倒す。
フィンの長い髪は朝日に反射してキラキラと輝きを放ちながら揺れた。
「エルヴィンさんっ!?
ちょっと‥…‥‥んぅっ。」
エルヴィンがフィン手を掴み自身の口元に誘導していく。
フィンの白く細い指先を口に含む。
ちゅぷり_____
甘い音が漏れる。
「やっ……エルヴィンさん、舐めないでください‥‥」
フィンの指先をエルヴィンは飴を転がすかのように舐めたり吸ったりする。
「・・・・昨日、もっといやらしいことを
フィンは私にしていたんだが?」
エルヴィンの発言に想像が駆け巡り、頬を赤く染めた。