• テキストサイズ

転がすダイス【ヒプマイ夢】〘帝統夢〙

第1章 自然体のあなた




成人してから、私は父の会社の視察によくついて行く事が増えた。

父は今日、あまり私を連れて行きたくなさそうな様子だった。

その理由が分かったのは、着いた場所を見た瞬間分かった。

ここは、カジノだ。

初めて来るけれど、どんな場所かくらいは、さすがの私でも分かる。

確かに父は、カジノで遊ぶ為に外国まで行く位は好きなのを知っていたけれど。

まさかカジノまで経営しているとは知らなかった。

そこで私は、一際気になる人を見つけた。

妙に目を引いた彼は、負けているのか、鬼気迫る顔をして、テーブルにかぶりついている。

「おや、今日は負けているのかな?」

「うぅーっ、まぁ、マズイやつっス……。はっ!? おいおいおいっ! ちょ、マジかよっ! があああぁぁぁあっ!!!」

この世の終わりかとでもいうように、崩れ落ちる彼を見て、父は笑っている。

「あはははっ、残念だったねー。まぁ、そのうちまたツキは回ってくるさ。また待っているよ」

知り合いなのか、いつも仕事中は厳しい父が、楽しそうにしている。そんな父を見るのは久しぶりだ。

「丁度よかった、今日は娘を連れてきていてね。紹介しよう。、こちらはうちのお得意様だ」

父に言われ、項垂れる彼に私は近づく。

目が合う。

男性とこうしてしっかり目を合わせる機会がほとんどない私は、彼のまっすぐ向けられた視線にドキリとする。

男らしく、凛々しい整った顔立ちの男性だ。

「初めまして、と申します。父がお世話になっております」

彼は有栖川帝統さんで、毎日のようにこのカジノへ訪れるらしく、自らギャンブラーだと言っているらしい。

ギャンブラーとして生きているだなんて、凄い人だ。

「よろしくなっ!」

そう言って無邪気に笑った彼に、またドキリとする。

私は、彼に興味を持った。

「……あぁ……今日は野宿かー……はぁ……」

落ち込んで座り込んでいる彼と目線を合わせるように、しゃがむ。

「あの、もしよかったら、お部屋ご用意しましょうか?」

私の言葉に、有栖川さんはぱあっと表情を明るくして私を見る。

あぁ、どうしよう凄く可愛い。

そして私は、生まれて初めて自分の欲を出した。





/ 25ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp