第4章 初めまして、後藤です
俺は後藤という者だ。
鬼殺隊事後処理部隊隠をやっている者だ。
柱合会議の時竈門炭治郎に
『いつまで寝てんださっさと起きねぇか』
と言ったのが俺だ。
今日はいつもの事後処理とは別の仕事。
岩柱 悲鳴嶼様からの預かり物を届けるために、とある場所へと向かっている。
何処へ向かっているのか、聞きたいか?
そんなに聞きたきゃ教えてやるよ。
風柱邸だ。
そう、あの鬼殺隊一おっかない柱のお宅。
俺は今、風柱 不死川様の元へ託された手紙を届けるべく足を動かしている。
言うなればちょっとしたおつかいだ。
でも正直言えば行きたくない。
何故かって、さっきも言ったが理由はただ一つ。
おっかないからだ。
これは俺に限った事じゃない。
隠は皆口を揃えてそう言うだろう。
いやホント怖ぇんだよ。
前に不死川様の任務の事後処理に入ったら、その時の不死川様の虫の居所が悪かったのか
『いつまでチンタラやってんだァ!さっさと終わらせろォ!』
と怒られた。
俺らの中では割とスムーズに進めているつもりだったんだが、不死川様にはそうでもなかったようだ。
また別の任務の事後処理へ入った時も、作業中に怪我をした隠に
『ばかやろォ!』
と怒鳴っていた。
そばで聞いているだけで背筋がシャンとするような、凄まじい怒鳴り声だった。
ちなみに怒鳴られたのは女の子の隠。
終わった後しくしくと泣いていた。
気の毒に。
こういう場面ばかり見て来たせいか、“不死川様=怖い"の公式がすっかり頭の中にこびりついてしまった。
手紙を渡すだけなのだから、ビクビクする必要は無いんだが、些細なことでご機嫌を損ねたらと気が気ではない。
そんなに嫌なら別の奴と代わったらどうかと思うかもしれないが、それではダメなのだ。
何故ならこの手紙、目の見えない悲鳴嶼様の代わりに…
俺が代筆したからだ。
そして言われてしまった。
『この手紙、必ずや不死川の元へ届けて欲しい』
そんな事、直接言われてしまったら、俺が届けないわけにはいかないだろう。
それに、おつかいのようだがこれは仕事だ。
仕事なら最後まできっちりやり遂げる。
それがこの俺、後藤だ。