第1章 幸せのカタチ
もうこれ以上、どうしたらいい?
どうしたら私の思い、届きますか?
誰か、教えてください…
いつまでも開かない戸の前で座り込み涙を流す。
惨めだった。
だめ…かなぁ……
諦めかけたその時…
ーガコン……ガラガラ……
つっかえ棒の外れる音と共に、固く閉ざされていた戸が静かに開く。
ハッと顔を上げると、やれやれといった表情で不死川さんが立っていた。
「…不死川さんっ…」
やっと会えた…
今目の前に不死川さんがいる。
それだけで嬉しくて、またぽろぽろと涙が溢れた。
不死川さんは私の前にしゃがみ込む。
初めて会った時みたいに。
「ボロボロじゃねェか」
そう言って、私の涙を指で優しく拭ってくれる不死川さん。
「っ…不死川さんのせいですっ…」
「そうだなァ…」
「会いたかっ…しなず、がわさんっ…」
すると次の瞬間、目の前が不死川さんの傷だらけの厚い胸板でいっぱいになった。
逞しい腕にぎゅっと包み込まれる。
抱きしめられたと分かって、幸せな気持ちになった。
「あーあ、どうしてくれんだ俺の決意をよォ」
「そんなの、丸めてその辺にポイして下さい」
「お前なァ…」
そう言ってフッと笑う不死川さん。
少し身体を離すと、真剣な顔の不死川さんと目が合った。
「…本当に俺でいいか?」
「はい」
「後悔しないか?」
「しません」
「なら、これからは離れたいっつっても離してやんねェぞ…いいか?」
「はい、私も絶対離れたくありません」
「…ははっ、お前意外と頑固だなァ」
不死川さんは柔らかく笑った。
釣られて私も微笑み返す。
「… 葉月」
初めて下の名前で呼ばれ、びっくりしていると、
「…呼んでくれ…俺も」
「……実弥さん」
満足そうに微笑む実弥さん。
お互いを初めて名前で呼び合って、ちょっと気恥ずかしかったけれど、それ以上に心は幸福感でいっぱいになった。