第6章 白詰草の花言葉
名残惜し気に唇を離すと、顔を真っ赤にする葉月。
可愛いなァ…
こんな時でなければまだまだ続けたい所だが、「続きは後でなァ」なんて囁いてから、蝶屋敷の門へと歩き出す。
すると…、くいっとまた袖を引き俺を止める葉月。
「実弥さん、…も、もう一回…だめ?」
「っ…おまっ…⁈」
赤く染まった頬に、物欲しげな上目遣い。
こんな顔見せられちまったら、欲が膨れ上がっちまうだろォ。
せっかく抑えていたと言うのに、だ。
…一体誰の入れ知恵だァ?
「…オイ、どこでそんな誘い方覚えてきたァ…」
「え?…っん…」
きっと葉月は、そんなつもりはなかったと言うだろう。
だがこんな、まるで誘っているかのような仕草で見つめられたら、…断れねェだろ?
仰せのままに、俺は再び唇を重ねる。
人ん家の前だとか、もうそんなんどうでもよくなっていた。
葉月も珍しく、空いている手を俺の首の後ろに回して離れないようにとしがみ付いている。
滅多に見れない葉月に少し嬉しくなり、葉月の気の済むまで何度も唇を合わせた。
ここじゃなきゃァ、もう押し倒している頃だ。
もう少しくっ付きてェが、両腕の荷物が邪魔をする。
…これだけ置いてもう家に連れて帰るかァ。
等と考え始めるが、それこそ何を言われるか…
幸い誰もここの前を通らなかったので、心置き無く葉月の唇を堪能した。
蝶屋敷の方からこちらをじっと見つめる視線は感じるが。
一般隊士かァ?
恐らく……三人、だなァ…。
蝶屋敷の敷地内に入ると、玄関で待ち構えていた神崎アオイに胡蝶のいる場所まで案内される。
「しのぶ様、不死川様と葉月様をお連れしました」
案内されたのはいつもの診察室やベッドの置かれた病室の板張りの部屋ではなく、広々とした和室だった。
障子は開け放たれ、陽の光が部屋中を明るく照らす。
清々しい夏の風に吹かれ、縁側の風鈴がチリンと音を奏でた。
外の景色でも眺めていたのだろうか。
縁側に腰掛けていた胡蝶は、神崎に声を掛けられこちらへと振り向く。
「アオイ、ありがとう。不死川さん、葉月さん、こんにちは。お待ちしてましたよ」
胡蝶はいつものようににこりと微笑んだ。