第2章 季節が変えるのは
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鬼殺隊には少しばかり女性隊士は居るが体格の良い女子ばかりなので、狼の群れに華奢で可愛らしいまゆが仔羊状態になるのを兄達は心配しているのである
家を出る前日、自分にけじめをつけるため継国家に挨拶に行った。鬼殺隊の話は伏せなければならない為、嫁に行くと言う事にした。それ以外でまゆが家を出るというのは、あまりに不自然だからと茂からの助言である
まゆ「ごめんください」
巌勝「(まゆ…あぁ、愛らしい…)」
志津「まゆちゃん上がっていく?」
巌勝と志津は丁度庭先に出ていた為、直ぐにまゆを見つけ志津は家に上げようとするが、まゆは「ここで大丈夫です。要件を言ったらお暇致しますから」と断る
巌勝「要件とは…?」
志津「お嫁にでも行くのかしら♪」
まゆ「はい、突然ですが縁談が纏まりまして遠方に嫁ぐ事になりました故ご挨拶をと…」
巌勝は頭を鈍器で殴られた様な衝撃を受ける。『まゆが嫁に…他の男に嫁ぎ抱かれる…考えただけでも気が狂いそうだ!嫌だ嫌だ嫌だ!!』と内心穏やかではいられなかった
志津「まぁーおめでとう♪心配してたのよ〜色々と!ねぇ巌勝さん?(漸く目障りな女が居なくなるのね、フフッ)」
巌勝「…………(例え会えなくともまゆが近くに居るのだけが救いだった…まゆの部屋から微かに聞こえてくる愛らしい声が癒しだった…許されるならば連れ去りたい、今すぐにでも…)」
まゆ「では、お世話になりました。さようなら…」
巌勝は志津の問い掛けに答えず黙り込んだ。まゆとて武家の娘、いつかは政略的に嫁に行ってしまう事は頭では理解していたが心がついていかなかった
巌勝は今でもまゆを心の底から愛しているのだ。『自分が幸せにしたかった』と悔しさが込み上げて来る。気がつけば握り締めた手から血が出ていた
志津「漸くまゆちゃん嫁ぐのね。良かったわぁ、どんな殿方なのかしら。巌勝さんもいい加減諦めなければなりませんわね」
巌勝が黙り込んでいるうちにまゆは走って帰っていった。まゆも辛いのだろう、自分の心の内に燻っている想いがまだあるのを自覚してしまったのだから
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