第18章 三度目の正直
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柱就任から数ヶ月後、任務を休みなくこなして久しぶりの休日。私は、とある街で買い物をしていた。休みとはいえ、いつ呼び出しが来るか分からないから隊服姿で帯刀をしてるんだけどね
まゆ「あ、母上に似合いそう!あれも買っちゃおうかな♪…………ん?巌勝さん………」
この気配は…
私が間違えるわけがないわ
フっと振り向くと、見覚えのある柄の直垂姿の男性が居た
あぁ、巌勝さんだ…
まゆ「グラウ、誘い出せる?」
グラウ『グゥ(御意)』
私のアストラルサイドに居るグラウが返事をすると、巌勝さんの前に現れた様だ
絶対に巌勝さんを鬼舞辻から取り戻す!
まゆ「よし!」
私はアストラルサイドに潜り、そこに有った全身を隠せる黒いローブを身に纏って森の中へと空間移動をした
【黒死牟SIDE】
今日は曇り、三度笠を被って何となく散歩をしていた。折角だからと足袋を新調しようと立寄った呉服屋で、月と桜の花をあしらった簪を見付けた
黒死牟「まゆに…似合いそうだ…」
そんな事を思っていると、不意に袖口を引っ張られた。目の前には小さな異型のもの
その異型は小さく「グルル」と鳴く
この気配と鳴き声はあの日、縁壱が死んだ日に確かに存在していたであろうものだった
混沌の龍が従えた鬼ではない魔物
私は『着いて来い』とばかりに袖を引っ張る異型に着いて行く
森の中に入って行くと、見覚えのある黒ずくめが静かに私を見据えていた
黒死牟「混沌の龍…」
まゆ「久しぶりね黒死牟さん。いいえ、巌勝さん」
その声で、まゆと同じ声で私を『巌勝』と呼ぶその女は、こちらへ近付いて来る。この女は矢張り人ではないようだが…何故人外が子孫にいるのか…そもそも縁壱とまゆの曾孫等ではなかったのか…?
黒死牟「あぁ、久しいな混沌の龍よ…何用だ?」
まゆ「随分冷たいのね。まぁ良いわ、質問しても良いかしら?」
黒死牟「構わぬ」
何を聞かれるのだろうか…この女の考えが全く読めぬ
まゆ「じゃぁ聞くわ。今でもまゆを愛してる?それとも忘れちゃった?」
巫山戯た事を…
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