第4章 無限城<弐>
突然、轟音が響き部屋中が揺れ出した。あまりの激しさに、汐は思わず足を止め、隣を走っていた義勇も刀に手をかけた。
「何だ、この揺れは!!」
「義勇さん!!」
「落ち着いて炭治郎。周りを警戒して!」
汐は叫ぶように言うと、精神を研ぎ澄ませて鬼の気配を探った。
(まだだれか戦っているのか!?また誰か死んでしまうのか!!)
炭治郎の心に再び焦りが生まれるが、その衝撃は段々とこちらに近づいているようだった。
その時、炭治郎の鼻が強い鬼の匂いを捕らえた。
(この匂いは・・・!)
炭治郎は匂いに覚えがあった。忘れもしない、この匂いは・・・
「上だ!!大海原、下がれ!!」
義勇の声が響くのと、天上が突き破られるのはほぼ同時だった。
「!!」
汐は間一髪で落ちてきたものをよけ、自分の前に立つその鬼を見つめた。
「お、お前は・・・!!」
汐と炭治郎はその鬼に覚えがあった。
全身に藍色の線状の文様を浮かばれた、筋肉質の青年のような鬼。
忘れもしない、あの忌まわしい記憶。
「久しいなァ」
鬼の嬉しさを隠しきれない声が、轟音と混じって耳に届く。
「良く生きていたものだ。お前等のような弱者が。竈門炭治郎!!ワダツミの子!!」
その瞬間、二人の心に怒りと殺意が沸き上がる。
「猗窩座ァァァァアア!!」
「野郎ォォォオオオ!!!」
二人の咆哮が重なり、城中に響き渡った。