第2章 幕間~紡ぎ歌(胡蝶しのぶ編)
(この子は・・・、いえ、この人は・・・いったい何者なの・・・?)
だが、考える間もなくしのぶは強烈な眠気に襲われ布団に身体を預けた。
「眠いの?」
「ええ。流石に疲れたようなので、少し休みます。あの、アオイたちが帰ってきたら・・・」
「大丈夫、うまくごまかしておくわ。だからしのぶさんはゆっくり休んでね」
汐がそういうと、しのぶは頷きにっこりと笑った。
それは作り物の笑顔ではなく、心からの笑顔だった。
「あと、しのぶさんが何を決意しているのかは知らないけれど、無理をしてカナヲやアオイたちを心配させる真似はしないでよ?」
「約束はできませんが、検討します」
「言うじゃない」
汐は憎まれ口をたたきつつも、笑顔を返しその場を後にした。
汐が去った後、しのぶは一人天井を見つめていた。
(大海原汐さん。私は、あなたが怖い)
しのぶは目を伏せ、口元を微かに歪ませた。
(あなたの言葉が、私の決意を揺らがせる。怖くなかったことが、怖くなってくる)
――でもあなたには、私のようになってほしくない。幸せになってもらいたい。
「ありがとう・・・」
しのぶはそう呟き、ゆっくりと目を閉じた。眠気がしのぶを夢の世界へと連れて行く。
その日、しのぶは久しぶりに十分な休息をとることができた。
運命の血戦の日まで、あと少し・・・。