第1章 噛まれたい噛みたい噛んじゃダメだ
ここは夜の新横、『吸血鬼退治事務所』前。
本当にあるんだ、こんなところに。
噂で聞いて、ネット検索してみたら住所が出た。
でも、でっち上げっていう場合もあるだろうから、実際来るまで半信半疑。
事務所にはロナルドさんという、赤い衣装を身に纏ったハンターさんと、サリーちゃんのパパみたいな…ゲフンゲフン、
畏怖するドラキュラ、ドラルクさんがコンビを組んで、吸血鬼関係の依頼を解決してくれるらしい。
対すべき存在同士なのに謎である。
と、アルマジロのジョン?
マジで居るんだろうか、会ってみたい。
好キ子は息を弾ませながら、ドアを開けた。
「あの、すみません、依頼を…」
「ピッピドゥー!!」
「やかましい!!」
目の前には、ジャージで奇々怪界のダンスを踊る銀髪イケメンと、
ゲームやってる猫耳みたいな伯爵がおりました。
「えっ…と、間違え…」
「てない!!間違えてないから忘れていらっしゃいませぇ!」
閉めようとしたドアを、イケメンは必死に押さえた。
勢いが怖い!!
「これは麗しいお嬢さん、何のご依頼ですかな?」
伯爵は好キ子の手を優しく取ると(青白い手だ!!)、奥のソファーへ促す。
な、慣れている…
「すいません、さっき脱稿したばっかで、直ぐ着替えてきます」
ロナルドはドア向こうの部屋に入っていった。
ハンターが脱稿…とは?
テーブルにはマルっとしたアルマジロがいて、お茶を出してくれた。
直立マジアルマジロジョン!!
再び出てきたロナルドは、白いズボンに赤い装束を纏ったハンターらしい格好になっていた。
「お待たせしました。で、ご依頼というのは?」
居酒屋のつもりで入ったらハプニングバーだったみたいな衝撃だけど、よ、よし、後はシュミレーション通りに行こう。
「はい…私、噛希流野 好喜子(かまれるの すきこ)と言うものです」
「また変なのが!!」
「その美味しい依頼、詳しく聞かせてくれませんかな?」
「本音が滲み出てんだよクソ砂」
伯爵こと、ドラルクさんはマッハでロナルドさんに殴られ、砂(死)になった。
ジョンはヌー!と泣いている。
「お嬢さん、失礼ですがそのお名前、本名ですか?」
「ハゥ、すいません。依頼内容を名前に反映させると、めちゃくちゃ話が早いと掲示板に書いてあったもので…」