第3章 気づいたときにはもう手後れ
『…んっ…』
目が覚めると、部屋の中は真っ暗だった。
サイドテーブルに置いてあるデジタルな置時計を横目で見ると20時08分。そんなに長く寝ていたんだなとまだ覚醒しきれてない頭でぼんやりと考える。
なんだか、体が痛い…。
気持ち悪さは大分ましにはなったけど、まだ調子悪い。
更に汗で体がべとべとしていて気持ちが悪かった。
本調子ではない体を無理矢理動かして、浴室へと体を動かして汗で汚れた体を綺麗にした。
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翌日、その日は雨だった。暗く重い雲からザーザーと降る雨は今の私の心情を表しているようで。
今日は一人任務のようだ。
伊地知さんが運転する車に乗り、新宿にある廃ビルへと向かっている。
車内で任務の内容を聞く私に伊地知さんは頑張ってくださいと最後に元気付けてくれた。
伊地知さんはとても優しい。
男性は苦手だけど、伊地知さんは
何故だが心が安らぐ気がした。
他愛のない会話を何度が交わした後、目的地へと到着した。
廃ビルにはいる私を見送った後
伊地知さんは車を発進させ、その場には私しかいなくった。
否、正確には私と呪霊の二人きりになった。
『調子が悪いから、とっとと早めに終わらせよう…早く出てきなさい!』
静かな空間に呼び掛けても、シーンと不気味な程静まっていた。
そんな簡単に出てきてくれるわけじゃないか…。
呪具を用意して、呪霊がいるであろう場所に呪具を振りかざせば悲鳴をあげた呪霊が私へと飛びかかる。
そんな低級呪霊を一瞬で消し去り元来た道を戻ろうと振り返れば
嫌な気…それも強くて重い気配が辺りを覆いつくす。
『…っ…聞いてないよ…2級かな…?』
2級だとすれば、ぎりぎり勝てるか相討ちか…。
ビリビリとした嫌な気に、更に気持ち悪さは加速した。
床に手をついて、吐き気を落ち着かせる私の前ににやにやした顔で呪霊は長い爪を見せびらかした。