第2章 後ろの正面だあれ?
あの日から、毎日五条先生は顔をだしてくれた。忙しい身でありながら、少しの時間が空いたその貴重な時間を私の為に。
『五条先生…』
「呼んだ??」
『っ?!…な、なんで??』
「なんとなく?見まわりしとこうかなって」
五条先生はそう言うと、にこりと笑った。そして、私に近寄るとぎゅっと抱き締めて、あの時のように
頭をぽんぽんと優しく叩いて気持ちが落ち着くまで一緒に居てくれた。
優しい温もりと香りに包まれて、とても心地よかった。
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『ありがとうございました…』
「落ち着いた?…は汚くないからね?」
『…え?』
「だって、最近必要以上に手を洗っていたでしょ?」
気がついていたんだ。気にかけてくれていたんだ。
生徒だからとわかってはいても
とても嬉しかった。それと同時に五条先生に見初めている自分がいるのを自覚した。
それでも、身分の違いや優しさに惚れた一時の感情なんだって自分を誤魔化しては隠し続けていた。
募る思いに蓋をすれば、溢れるのがわかっていたというのに。
任務が終わった帰り道。久しぶりに手こずってしまった。
大きな怪我はないのだけれど、
力はないが逃げ足が早くてなかなか祓うのに時間がかかってしまった。
じとりと嫌な汗が頬を伝う。足早に戻れば大丈夫と自分に言い聞かせて、暗い夜道を歩いていたら。
いつかの日のように、公園の中へと引きずり込まれて目隠しをされた。
『っ…やめてっ!?』
男は荒い息をしながら、私の唇を貪るようにキスをした。
何度も何度もキスの雨を降らすこの男を私は知っている。
鼻に届くこの匂い。
前回私を犯した男だと確信した。
『また、貴方ねっ…この下衆が!!
離しなさいよ!!』
手首を拘束され、ジタバタと動かせる足は相手に届かず無駄に体力を消費する。
男は声を押し殺すように笑うと。私の服をビリビリと破る。
少し冷えた風が素肌を軽く撫で
寒さと恐怖からぶるりと身を震わせた。