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幻水2夢短編集

第3章 遠き日の子守唄(ルカ様)


 ルカとの情事が終わると、その余韻に浸るように深い口付けを交わし合う。はこの一時が好きで堪らなかった。愛されているわけではないとは理解してる。理解はしているが、それでも尚、深く甘い口付けは、彼女に愛されているような錯覚を与えてくれるのだ。
 やがて唇が離され、思わず彼女の唇からは熱い吐息が溢れる。何時もならば、この後は適当な事を語らい合いながら……と言ってもがほぼ一方的にだが……眠りにつくのだが、今日ばかりは違うようであった。ルカはの顔を少しの間だけ見詰めると、そのよく鍛えられた武人らしい上体を起こす。もそんなルカにつられるように上半身を起こした。すると、情事の前に着ていた彼のガウンを、その華奢な肩に掛けられる。

「、膝を貸せ」

 今までされた事のない行動に困惑していたが、不意にそう彼に命じられ「は、はい」とは返した。肩に掛かる、明らかに自分より大きなナイトガウンを着込みながら、広いベッドにおずおずと座って彼に膝を差し出す。途端、ルカはその膝に無遠慮に頭を乗せてきた。どうやら、今日はこのまま眠りに就くつもりらしい。何時もとは違う彼の行動に、はついクスッと笑ってしまう。

「ルカ様?」

 がそう声を掛けると、ルカは「何だ」とだけ返してきた。何とも素っ気ない返事だが、にとってそんな返事ですら嬉しく感じる。

「触れてもよろしいでしょうか」
「……好きにしろ」

 些細なの願いを許すルカであったが、その口振りはまるで、一々そんな事を訊いて来るな、とでも言いたげなものであった。きっと彼女以外の家臣や将兵達が聞けば戦々恐々とするだろうが、かれこれ十四年程付き合いのあるにはそうでもないらしい。頬を薄紅に染めた少女のような笑顔を浮かべ、彼女は「はい」とだけ言う。そして、そっとルカの頭に触れると、ゆっくりと撫で始めるのであった。
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