第12章 悲しみの底
壁の端まで行き下を見下ろすと 不気味な巨人が何体か こっちを見上げて壁を掻いていた
ファーランとイザベルはあれと闘いあれに殺された…そう思うと悲鳴をあげそうなくらい恐ろしかったけど 体が強張った私に気付いたリヴァイが背中を支えてくれた
「あんまり端に寄るな 強い風が吹いたら危ねぇだろ」
「うん…ありがとう」
こんなにも広く綺麗な壁の外の世界は巨人達が支配する世界だと下を見ると実感する
持ってきたバスケットの中には沢山の花束が入っている
この小さな花束達は壁外調査前に最後に4人で行った草原で摘んできた
**********
『おばあちゃん…幸せだったのかな』
おばあちゃんが亡くなった時にも1人娘だったお母さんは来なかった
それをおばあちゃんは悲しんでるのかもしれないと思い 私はポツリともらした その言葉は住職さんの耳に届いた
『亡くなった方の声は私達には聞こえはせんからね 生きている家族や友人がどう思うかで幸せだったか不幸だったかが決まると私は思う
加奈子ちゃんがおばあちゃんを不幸だったと思うんなら不幸だったんだろう でも私には加奈子ちゃんに最後まで見送ってもらえておばあちゃんは幸せだと思うがね…
加奈子ちゃんはどっちだと思う?』
**********
花束を1つずつ壁の外に投げていく
地下街に居たら見る事が出来なかった世界だ
調査兵団に入ったから太陽や星や月も見れた 風や雨も体験したし 緑豊かな自然の中を立体起動で飛び回る事も そして壁の外の景色を見てファーランもイザベルも目を輝かせた…
2人の人生は不幸じゃない 短い人生だったけど幸せな瞬間のほうが多かったはずだ
「いつか上からじゃなくて同じ目線で壁の外へ出て行くからね…
これからも私はいっぱい泣くと思うけどその分強くなるから…だから空から見ていてね」
「来てよかった…エルヴィン リヴァイ ありがとう」
花束を全部投げ終わりファーランとイザベルへの供養をすませた