第11章 リヴァイの選択
私の頬にリヴァイの指が触れた
リヴァイが涙を拭っても拭ってもポロポロと溢れてしまう 泣きたくはない…でもリヴァイに触れられると止める事が出来なかった
「出発の日の朝に言ったろ?カナコは笑って待ってろって…だから…それでいいんだよ」
「ありがとう…」
頬を伝う涙を吸われ 石鹸の匂いのするリヴァイに抱きしめられながら背中を擦ってもらえば私は次第に落ち着いていった
涙も止まり心も呼吸も落ち着いた ティーカップを持つ手の震えも止まる
隣に座るリヴァイを見ると右手でカップを持ち視線を前に向け紅茶を飲んでいた
リヴァイは私が落ち着くのを静かに待ってくれている
もう…大丈夫…
今度は私がしっかりとリヴァイを受け止める番なんだ
「リヴァイ…大丈夫だよ話してもいいよ」
リヴァイはカップを置いて私に体を向けてふわりと笑った
「やっぱりカナコには分かるんだな」
リヴァイは私の両手に手を重ねてギュッと握った
「調査兵団に入ったのは偶然エルヴィンに捕まったからじゃない…
事前に仕事の依頼をうけていた 内容は
エルヴィンが持っているロヴォフ議員の不正の証拠書類を手に入れる事とエルヴィンの後始末だ
報酬は金と地上の居住権
書類はファーランとイザベルが エルヴィンの命は俺が狙っていた」
それからリヴァイは私に話していない依頼をうけた経緯と壁外調査での1日目の夜と2日目の雨のなかでの出来事を話した
地下街で啜った下水の味が口の中にひろがり あの時に見せたエルヴィンの顔を思い出した…と
絞り出すようにリヴァイはつぶやく
「あの時の選択が正しかったのか俺には分からない
自分の力を信じても信頼する仲間の選択を信じても結果はどう転ぶか誰にも分からない…
だがアイツは俺には見えない何かを見ていた…
俺はその何かを知りたい…
アイツの横でその何かを見たい…と思った」
リヴァイが認め信頼する何かがエルヴィンにあったんだ
こんなリヴァイを見たのは10年以上も一緒に居て初めてだった