• テキストサイズ

【進撃の巨人】月と青い鳥

第11章 リヴァイの選択



洗い場には汚れた制服やマントが山積みになっている


明日はこれの洗濯か…私の体しばらくは筋肉痛だろうな



「カナコ…」

洗濯物の山を見ながら深く息を吐いていたら後ろからリヴァイの声がした



「リヴァイ!やっと逢えた!」


いつもより低く覇気の無い掠れた声だった でもやっと逢えた嬉しさで私はリヴァイを抱きしめるとポロポロと涙が溢れた


「帰還したって聞いたのにみんなの姿が無かったから すごく心配だった リヴァイは怪我は無いの?」


珍しくリヴァイの体からは5日間の臭いがしていた


私が抱きしめてもリヴァイの両手はだらりと下がったまま動かない


「……ファーラン…と…イザベル……は…」



目の下に隈ができ 憔悴した顔をしているリヴァイを見て 私の心臓は どくん と大きく鼓動を打った


心臓がどくどくと体の中で暴れる 暴れる心臓を止めたくて 手を合わせて心臓の上に押し付けた




「守れなかった……

ファーランとイザベル…は2日目に

…巨人に喰われた」


くわれた…

クワレタ…


灰色がかった薄い水色の瞳で優しく笑うお兄さんみたいなファーラン

癖のある赤毛の髪を揺らしてニッと歯を見せて明るく笑うお転婆な妹みたいなイザベル

「喰われ…た…?」


キーンと耳鳴りがする その耳鳴りは大きくなり私は座り込んだ

私の肩を掴むリヴァイを見ると口は動いているのに声が聞こえない 唇の動きもスローモーションに見えた

胸が痛い…苦しい…耳鳴りと自分の心臓の音が頭蓋骨に響き 視界がぐにゃぐにゃと歪み 目に写る世界が色を無くしていく



この感覚は知っている

お父さんが帰ってこないと分かった時

お母さんの姿が新幹線のホームから消えた時

おばあちゃんが病室で息をひきとった時




私の小さな幸せは何度も歪み地面に染み込んで消えていく




「どうして… 私は悪い子なの?いらない子なの?」





顔に痛みが走った



「カナコ!カナコ!俺を見ろ!」


何度も痛みが走ると 耳鳴りが小さくなり リヴァイの叫び声が鼓膜を震わせた

黒い霧で塗り潰された視界に少しずつ色が戻ってくると 目の前には必死に私を呼ぶリヴァイの顔があった


/ 172ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp