第8章 お前が居ればそれだけで
「カラ松……泣かないで、ごめんね。ちょっと考えさせて欲しい……。」
「ああ、わかった。すまない。」
やんわりと彼の手を離しそう告げる。私の中でいろんな疑問が浮かんでいた。彼とこの世界で本当に一緒に過ごすことができるの?
私はあの慣れ親しんだ世界を捨てることができるというの?お母さん、
今この人の目は真剣そのもの。刺すような目で私のことを見てくる。私のことを絶対に逃さない。強い意志を感じる。
この人の可能性に賭けてもいいって思う。でもやっぱりあの世界を捨てるっていうことが私はとても怖かった。
「私ね。カラ松のこと凄い好きなんだよ。もうカラ松が思っている以上に好きなんだと思う。カラ松とならいろんな世界を乗り越えることができることも知ってるし、ここに居れば毎日カラ松にも会えるの。」
「じゃ、じゃあ!!」
「でもね。あっちの出来事もね。私にとってはとっても大切なものなんだ。私はどっちを選べばいいのかわかんない。でもカラ松のことは凄い好きなんだよ。あっちには私がしたかった夢もあるんだよ。」
「夢なら、こっちの世界でも叶えられるかもしれない!!一緒に夢を叶えていくこともできるんじゃ無いか?俺は、お前を離したく無い。」
「うん。こっちでカラ松と一緒に夢を叶えていけるのは楽しそうだよね。でもリアルを見てなかったからおそ松さんの世界に行きたいって思った時もあったよ?でもリアルを見たら、現実を突きつけられたら、すごく胸が苦しくなったの。でもカラ松とも一緒にいたいのどうすればいいの?」
「俺はお前をもう離したく無いんだ。」
カラ松はそういうとそっと肩を抱き締めてくれていた。
「みちる今日はここに泊まって行けばいい。居間に布団敷くから。」
「うん。ありがとう。」
言葉少なになってしまったと同時に、下で十四松の声がしていた。
「カラ松にーさん!彼女さん!晩ごはーん〜!!」
とても大きな声が部屋中に響いたため、遠くから叫ばれたとわかっていたとはいえ、体がビクついてしまった。
「十四松さん、大きな声だね。とっても賑やかで楽しそうな家族だね。」
「ああ、いつも騒がしくてな。みちる下に行こうか。」
そういうと私の肩をグイッ強く抱き寄せた。思ったより強く肩を抱かれたのか右肩が少しだけ痛かった気がする。