第4章 素直 前編【※錆兎】
それから一年後の事だった、錆兎がその子供と再会したのは。
偶然、同じに任務についたソイツは、錆兎を見るなり、開口一番にこう叫んだ。
「あ、選別の時の、お節介男!!」
そう言われて、錆兎は記憶を辿り、あの時の感じの悪かった子供だと思いだした。
しかし、違和感がある。あの時のコイツは、七日間の山籠りのせいか、薄汚れ、身なりも体型も貧相だったし、髪も短かった。しかも緊張からか、疲れ切った表情で暗い目をしていた。
でも今、目の前にいる人物は、身なりも綺麗になっていて、髪も伸びている。
そして何よりも、明るい場所でみたその顔は、整っていて美しく、さらに選別の時よりも、柔らかく丸みのある身体付きに変わっていて……、これは…間違いなく……、
「お前、女だったのか!?」
パァンっ!
その瞬間、小気味良い音を立てて、錆兎の頬に平手が飛んだ。
それがこの女、氷渡陽華と錆兎の出合いだった。これ以来、ことある事に陽華から、言い掛かりを付けられ、犬猿の仲が続いている。