第16章 初恋 中編【伊黒小芭内】
そのまま黙り込んでしまった小芭内と実弥の間に沈黙が流れる。その沈黙を破ったのは、
「お待たせしましたぁ!!」
突然二人の間に割って入ってきた、陽華の明るく可愛い声だった。
「うぁっ!!」
話していた当の本人の登場に、小芭内の心臓が外に飛び出してしまうんではないかと思うくらいに大きく跳ねた。
「なんだっお前はっ!いきなり出てくるな!」
「ふふ、ごめんなさい。真剣な顔をされてましたけど、お二人で何の話をしてたんですか?」
ひょこんと小芭内の隣に座り、ニコニコと微笑む陽華が問いかけると、実弥はニヤッと微笑んだ。
「そりゃあ、お前の……」
「あーーーーーーー!!」
実弥の言葉を小芭内が慌てて遮る。
「お、お前には関係ない!男同士の話だ!」
「えーー、私も混ぜて欲しいです!」
「そうだよなァ、仲間はずれは可哀想だろォ、伊黒」
ここぞとばかりに煽り立てる実弥を睨みつけ、小芭内は手に持った弁当に視線を戻した。
「もう昼休みが終わるっ!お前らも早く弁当を食べろ!」
この話はもう終わりだ!とばかりに弁当掻き込み出した小芭内に、実弥は苦笑いを浮かべ、その隣で陽華は不思議そうに首を傾げた。
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帰り道の並木通り、いつもの場所に陽華が待っていた。小芭内の姿に気づくと、可愛くはにかんで近づいてくる。
「……お前、いつも俺に付いて回ってるが、友達がいないのか?」
「えっ!?さ、流石にいますよ!先輩のクラスの鱗滝錆兎先輩、彼の妹の真菰が私の親友です」
そういえば、実弥がそんな事を言っていた。
「だったら俺なんぞに付き纏ってないで、そっちを構ってやれ」
流石に会いに来すぎな気もする。小芭内がそう問いかけると、陽華は「フフフ」と微笑んだ。