第16章 初恋 中編【伊黒小芭内】
すると、興奮して走り出した陽華の、その向こう側に………、
「虹ですよ、先輩っ!凄い綺麗!!」
見事な虹が浮かび上がっていた。
恐らくペットボトルロケットから噴射した水しぶきに、6月の照りつける日差しが反射したのだろう。
精一杯手を上げて、小芭内に向かい、楽しそうに虹をアピールする陽華。その光景にハッと驚いて、目を細める。
(……いつもより、眩しくみえる)
虹など、小芭内にとってはいつも見る光景で、何の感動もないはず。
なのに今は……、
いつもより妙に美しく眩しく映る虹と、手前ではしゃぐ陽華に目を奪われ、離せないでいる。
(くそっ、何なんだっ!)
小芭内は全てを振り払うように首を降ると、眉を釣り上げて陽華を睨んだ。
「おい、実験の邪魔をするなっ!さっさと退けっ!」
いきなり怒鳴られて、陽華はシュンっと項垂れると、大人しく小芭内の1メートル横、自分の定位置に戻った。
それを見ていた部員達が、遠巻きにこそこそと話し出す。
「副部長、部長の隣にいる美少女は誰ですか?」
「いや、わからんが……」
副部長と呼ばれた男が首を降ると、二年生の部員が驚いたように目を見開いた。
「ご存知ないのですか!?彼女こそ、転入初日にキメツ学園3大美女への仲間入りを果たし、昨年の文化祭で執り行われたミスコン・一年生の部でグランプリに輝いた、二学年一の美少女・氷渡陽華ちゃんですぞ!!」
そう興奮して叫ぶと、部員達が口々に「おぉ…」と口ずさむ。
しかし驚いては見るが、反対に疑問が強くなるばかりだ。
「なぜそんな美少女が、うちの部長と知り合いに??」