第3章 先輩【※冨岡義勇】
部活も終了の時間が近くなり、陽華は道場内を見渡し、先程、出ていった義勇がまだ戻ってない事に気が付いた。
(また、サボってる!)
陽華はそう思い、道場を抜けると、裏手に回った。
木々が生い茂る芝生の上、そこが義勇のサボり場所だった。
そこに行くと案の定、義勇は芝生に横になり、顔の上にタオルを乗せて、眠っていた。
「こらっ!もうすぐ、都大会が近いのに、またサボって!」
陽華が義勇の顔の横に立ち、見下ろすと、義勇は顔の上に乗せていたタオルをズラして、陽華を見上げた。
「またパンツ…見えてるぞ。」
「ちょっと、やだっ!」
慌てて陽華がしゃがみこむと、義勇はため息をつき、身体を起こした。
「なんで、俺に構う?」
「だって、先輩だって、私が管理しなきゃいけない部員の一人なんですよ?…はい。」
そう言って義勇にペットボトルの水を渡した。義勇はそのボトルを受け取ると、陽華に問いかけた。
「それだけか?」
陽華が「ん?」と、首を傾げると、義勇はまたため息をつき、ペットボトルの蓋を回し開けた。
義勇が顔を上に向け、ペットボトルの水を飲む。口から溢れた水が、口の端を伝い、首筋へと流れていく。それが妙に厭らしく感じて、陽華はじーっと、義勇を見詰めた。
「どうした?」
陽華の視線を感じて、義勇が声を掛ける。
「いや…先輩って、肌白くて綺麗だなぁって。」
「そうか?俺はお前の方が、白くて綺麗だと思うが…、」
そう言うと、義勇の手が伸びてきて、陽華の頬に触れた。そのまま、ゆっくりと擦るように頬を撫でられる。
「せ、せんぱい!?」
びっくりしたように、目を見開く陽華に対して、義勇は慌てて手を引っ込めた。
「済まない、少し触ってみたく…なった。」
(び、びっくりしたぁ!!)
心臓がバクバクと波打つの感じて、陽華は顔を赤くした。
「もう部活の時間も終わる。早く片付けて、帰れ。」
そう言うと、義勇は立ち上がり、道場の方に向かって歩いていった。