第13章 進物 完結編【※冨岡義勇】
(あれ……ここは……、)
陽華が目を覚ますと、そこは見慣れた自身の部屋で、自分の布団に寝かされていた。
(……私…何してたんだっけ?…………あっ、そうだっ!!)
唐突に記憶が蘇り、勢いよく布団から起き上がる。
「ぎ、義勇さんっ!」
「な、なんだ!?」
突然名前を叫ばれ、縁側に座り夜風を楽しんでいた義勇は驚いて振り向いた。
「あ…、義勇さん、」
陽華は慌てて布団の上に正座すると、義勇に頭を下げた。
「ごめんなさいっ!私、途中から記憶がっ、……そ、それに、もしかして…ここまで運んでくれたんですか?」
もうすぐ屋敷だったが、それでも屋敷まで運び、さらに部屋までとは、それなり距離があったはずだ。
「気にするな。お前を運ぶのは別に苦じゃない。」
「で、でもっ!」
「それに礼なら、もう受け取った。……可愛かった、お前の寝顔。」
「や、やだっ!もしかして、ずっと見てたんですか?」
「ずっとではないが、それなりに楽しんだ。」
義勇が満足そうにムフフと笑うと、陽華は顔を真っ赤にして頰を両手で抑えた。
「間抜けヅラしてませんでしたか?それにその…涎とか……、」
「どうだろうな……、」
含みをもたせるように言う義勇に、陽華は「うぅ…、」と唸って、恥ずかしそうに俯く。
そして、俯いたことで気づいた。
「え!?私、寝間着着てる!?」
いつの間にか、寝巻き用の浴衣に着替えさせられていて、陽華は慌てて自分の身体を抱きしめると、義勇を見た。
「ま、まさか…、義勇さんが?」
今日漸く想いを通じ合わせたというのに、全ての行程をすっ飛ばして、まさか、生まれたまんまの姿を義勇に……、
「ち、違う!妙さんだっ!」
義勇が慌てて、誤解を解く。
「あっ…妙さんですか。そうですよね。」
ほっ…と安心したように息をついて、周りを見渡す。
「そういえば…、妙さんは?」
「帰った。帰宅時間だと言っていた。」