第12章 進物 後編【冨岡義勇】
街からの帰り道、鳴柱邸まであと少しといった人通りの少ない道端で、陽華は隣を歩く義勇に話しかけた。
「義勇さん、今日は楽しかったですね。」
「あぁ。だが、少し騒がしかったような気もするが。」
お館様の命で、街の中に揃っていた鬼殺隊の面々を思い返して、義勇は軽く苦笑いをした。たぶん、一生分ハラハラさせられたんじゃないだろうか?
「ふふ、そうですね。でも誕生日にあんなにたくさん、おめでとうって祝われたこともなかったんで嬉しかったです。」
「そうか。鋭気は養えたか?」
「はいっ!!明日から、バシバシと鬼が倒せそうです!!」
そう言って、胸の前で拳を握りしめて笑顔を浮かべる陽華を見て、義勇も自然と顔を綻ばせる。
「それは頼もしいな。」
「……それに、義勇さんから素敵な物も頂きましたし。」
陽華は帯に刺さった、つまみ細工の帯飾りに手の平で優しく包むこむように触れる。
これがあれば、また義勇に会えない日が続いても頑張れそうな気がする。陽華はそう思いながら義勇ににっこりと微笑んだ。
「えへへ♡」
「ソレ…、そんなに気に入ったのか?」
「はい!だって義勇さんに買って貰いましたし、それにここっ!」
陽華は帯飾りの先端部分に装飾された深い青色のとんぼ玉を指さした。
「この深い青色が本当に綺麗で、まるで義勇さんの瞳みたいで素敵だなぁって。だから一目惚れしちゃったんです!……あっ」
言ったあと、思わず口を手で抑える。
(やだっ、何言ってるんだろ。これじゃ、義勇さんに告白してるみたいじゃない!)
「あの…違うんです!昔から、青が好きなんですっ!……だから、義勇さんに初めて会った時…、助けられたあの時、月明かりの下で見た義勇さんの瞳が…その…、とても綺麗だったから、それ以来…そんな色の小物とか、気になるようになっちゃって……それで…、」
しどろもどろで答えながら、隣で歩く義勇の顔を探るように見上げると、驚いたことにそこに義勇の姿はなかった。
「あれ?」