第11章 進物 中編【冨岡義勇】
ま、そんなのは余計なお世話ですよね?などと思いつつ、陽華が苦笑いを浮かべながら、隣の義勇を仰ぎ見る。すると次の瞬間、その顔を見た陽華の動きが止まった。
義勇が微かに困惑したような、驚いたような…そんな顔をして立ち竦んでいたからだ。
「……義勇さん、どうかしましたか?」
不思議に思い、問いかけてみるが反応がない。陽華の脳裏に不安が過ぎる。
(あれ?もしかしたら私、今すごく失礼な事を言ったのかも……、)
後輩の自分が、さも知ってる風を装って、先輩の義勇を心配していたような発言をしてしまったのだ。烏滸がましいにもほどがあるだろう。
(どうしよ、義勇さんの表情が読めない。何か言わなくちゃ……、)
陽華は無意識に、右手で自身の左腕を掴むと、ふぅ…と息を吐き出した。
「あのっ!…ち、違うんです、出会った頃の義勇さんは本当に素敵で、私の中では完璧だったんですけど、……でもっ…その、時折すごく悲しい目を…してる時があるなって…、いや…これも私が勝手に思ってただけなんですけど!」
なんか言葉を重ねる度にボロが出る気がしてきた。でもここまで来たら、止められない。
「だから…、なんか辛いことでも抱えてるのかな?…って思ってて、……でも私なんかじゃ…義勇さんのお力にもなれなくて…それがすごく歯痒くて……、だから私、義勇さんの前では出来るだけ…笑顔でいよぅ…と……、」
陽華の声が段々と小さくなっていく。だが、一生懸命説明する陽華の姿に、義勇は胸が熱くなるのを感じた。
全て見透かされていたのだ。自分は情けない姿を見せぬようにと、表面だけでも気丈に振る舞おうと、必死に取り繕って来たと思っていた。それなのに陽華には本当の姿も、弱い心も全てを見抜かれていた。
少し不安そうに瞳を揺らして義勇を見つめる陽華に、優しく微笑む。
「別に怒っているわけじゃない。…ただ…俺は…お前にもずっと、心配を掛けさせていたんだな。」
そして、それでも尚、失望することなく、自分のそばに居続けてくれた……、
(俺は…期待して、いいのだろうか?)