第2章 情欲【※不死川実弥】
「不死川先生、ちょっといいですか?」
声を掛けられ、職員室内の自身の机の前で、次の授業に使う教材を用意していた実弥は振り向いた。
振り向いた先には、同僚の陽華が立っていた。陽華は実弥と目が合うと、言葉を続けた。
「今度開催する、学園イベントの事なんですが……」
「あー、それなんだが、詳しい資料は数学準備室にあんだァ。後で…昼休みにでも、取りに来てくれねェか?」
「かしこまりました」
陽華は笑顔でそう答えると、自分の席へと戻った。
数学教師・不死川実弥と国語教師・氷渡陽華。
この二人、平静を装って、普通の同僚を演じているが、実は恋人同士である。
実弥の方が恋に落ち、モーションを掛けまくった結果、付き合って数ヶ月になる。
だが最近、不死川実弥はイラついていた。
ここ数週間、二人で会えていない。学園の行事や試験期間などが重なり、残業残業の日々で、ちっとも二人の時間が取れない。
我慢もとうに、限界を超えていた。
実弥は去って行く陽華の後ろ姿…もとい、タイトなスカートに浮かび上がる形の良いお尻を見つめてため息つくと、心の中で呟いた。
(…………やりてェ)