第9章 睡眠【※不死川実弥】
「今、目反らしたでしょっ!やっぱり、何かしたのっ!?」
陽華がさらに問い詰めると、実弥は目を瞑り、黙り込んでしまった。
「ちょっと、何で黙ってるのよっ!何か言いなさいよっ!」
問い詰めるように、身体をゆさゆさと何度も激しく揺らされると、実弥はウザそうに顔を顰め、舌打ちをした。
「チッ、うっせェーなァっ!それ以上、喋れねェように、もう一回咥えさせてやろーかっ!………あっ、」
苛立ちで思わず墓穴を掘り、実弥は口元を抑えると、顔を陽華とは別の方向に反らした。
「ほらっ、やっぱりっ!!ほんっとうに、信じられないっ!」
明らかに怒った表情で、実弥を突き放すと、陽華は背を向けて、黙り込んでしまった。
その背中を見て、流石にヤリ過ぎたな…と、実弥は反省すると、陽華の肩をトントンと軽く叩いた。
「おい、俺が悪かったァ。謝るから、機嫌直せェ?」
素直に謝ってみるが、陽華はピクリとも動かずに背中を向けたままだ。
実弥は小さくため息をつくと、その背中に向かって喋りかけた。
「なぁ、…今から、少しだけ仮眠取ったら、行くかァ?」
陽華の肩が微かに揺れる。
「……行くって…、何処に行くのよ。」
背中を向けたまま陽華が問いかけると、実弥が呆れたように鼻を鳴らした。
「街だよ。行きたかったんじゃねェーのかァ?」
その言葉に、慌てて陽華が振り返る。
「………いいの?」
「あぁ。詫びって…訳じゃねェけど、今日はなんでも好きなモン、食わしてやるし、買ってやるよ。」
「実弥、ありがとう!」