第9章 睡眠【※不死川実弥】
少しの間、夜風に当たり、下半身と気持ちが落ち着いたのを見計らうと、実弥は部屋に戻った。
「なんだ、こりゃァ?」
実弥は開口一番、そう呟いた。
整えて寝かしたはずの陽華が、すごい格好で寝ている。
陽華は横向きの状態で、綺麗に掛けてきたはずの掛け布団を、ぐちゃぐちゃに丸めて、抱きまくらのように抱え込んでいた。
着ていた浴衣はめくれ、掛け布団を抱え込んだ白い脚が、太腿の付け根まで顕になっていた。
「……忘れてた、こいつ、寝相がめちゃくちゃ悪かった。」
実弥は呆れたように息を吐くと、陽華に近づき、掛け布団を引き剥がして、仰向けに寝かせようと脚を持ち上げた。その拍子に捲れた浴衣から、陽華の下着で覆われた局部が露わになり、実弥はギクリとした。
応急処置で抑え込んでいたモノが、また疼き出し、一瞬、欲望に負けて、手を伸ばしかけたが考え直す。
(やべェ、これ以上はもう駄目だァ。起きた時に、確実に殺される。)
そう思いながらも、陽華の下着の膨らみから、目が離れない。そんな実弥の目の前に、二人の小さな実弥が現れた。
黒い服を着て、鬼のような角をはやした実弥が喋りだす。
『やっちまえよ?恋人なんだから、問題ねェーだろ?』
そんな黒実弥を牽制するように、白い天使の輪っかのような物を付けた実弥が、言葉を掛けた。
『絶対にだめだァ!!いくら、愛し合う恋人でも、守らなきゃいけねェモンがあんだろがァ!』
実弥がその言葉に、うんうんと頷くと、黒実弥がさらに耳元で囁いた。
『でもよォ、こいつだって暫くしてねェんだから、溜まってると思うぜェ?それを解消してやんのも、恋人の役目じゃねェのか?』
『そうだとしても、合意のない行為はっ……、』
言いかける白実弥の言葉を遮るように、黒実弥が前に出た。
『それによォ、コイツの中、思い出して見ろよ?熱くて、とろっとろで、お前のソレ…、ぐいぐい締めつけてさァ、堪んねェよなァ?』
思わず思い出して、実弥の喉がゴクリと音を立てる。そんな実弥の耳元で、慌てて白実弥が問いかける。
『考え直せっ!無理やりになんかしたら、それこそ終わりだぞっ?さっき、怒らせたばかりだろォがっ!』
その言葉が実弥の脳裏に切実に響く、そうだ、もし嫌われたら…、もう立ち直れないかもしれない。