第1章 誕辰 義勇誕生日記念【※冨岡義勇】
「どうだった、満足した?」
陽華は布団の中で、義勇に寄り添いながら、問いかけた。
「こんなに尽くされて、満足しないわけがない。最高の誕生日だった。」
そう義勇に微笑み掛けられて、陽華は嬉しくなった。天元の助言も馬鹿にしちゃったけど、こんなに喜んでくれるならやっぱり侮れない。これからも相談に乗って貰おう。
そんなことを陽華が考えていたら、義勇が口を開いた。
「…今度は俺の番だな。お前の誕生日、何が欲しい?俺は人を驚かすのは苦手だ。だから、先に聞いておく。」
そう義勇に問いかけられて、陽華は暫く考え込んだ。
「んー?」
宝石、洋服、美味しい食べ物。
どれもピンと来ない。食べ物ならまだいいが、他の物は実弥が言っていたように邪魔になるだけだ。
陽華は義勇にギュッと抱きつくと、
「私も義勇でいいよ。」
と答えた。義勇が呆れたように陽華を見返した。
「物欲がないな。本当にそんなものでいいのか?」
義勇が不安になって聞くと、陽華は笑顔で頷いた。
「うん!…でもその代わり、ちゃんと着けてよ?」
その言葉に義勇の顔が固まった。
「ちょっと待て、…リボンなら着けないぞ?」
天元のお嫁さん達には好評だった。と言う発言を聞いて、若干冷めた目で見ていたが、義勇が着けているの想像したら気持ちがわかった。絶対に可愛い。
やっぱり何処の恋人同士も変わらないんだ。と陽華は思った。
「えー、着けてほしいな。」
陽華がお強請りするように、上目遣いに義勇を見詰めた。すると義勇は観念するように目を瞑り、恥ずかしそうに小さい声で答えた。
「うっ…、善処する。」
その返事を聞いて、今度天元にリボンを新調して貰いに行こうと決めた陽華だった。
…うん。義勇に似合う青いリボンがいいな。
そんなことを思いながら、陽華は義勇の胸に顔を埋めた。
ー 誕辰 完