第8章 指南【※竃門炭治郎】
音柱邸にて
「とうとう、来てしまったな。」
目の前に建つ、荘厳な門構えのお屋敷を見上げた炭治郎は意味ありげに呟いた。
それを横で聞いていた善逸が、炭治郎に思わず突っ込む。
「いや寧ろ、何で一番最初に来なかったのか、俺はそっちの方が疑問だよ。」
「だって…この人は上級者過ぎて、俺に受け入れることが出来るか不安だったんだ。不死川さんとはまた違った、とんでもない物が出てきそうで……、」
胸に一抹の不安を抱えないでもないが、やはりこの人が一番適任と言えるのだろう。なんと言っても嫁が3人もいる。
善逸もその不安を察知したのか、炭治郎の言葉に苦笑いを浮かべた。
「俺は風柱も怖かったけどな。でもまぁ、確かに俺たちが思いもよらぬような行為が、飛び出しそうでは…あるよな?」
二人は小さく笑い合うと、音柱邸の門を叩いた。
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「………んで?この俺様に、指南を仰ぎに来たってわけか?」
夕刻を過ぎ遅い時間にも関わらず、訪ねてきた炭治郎らをもてなしてくれた、音柱・宇髄天元は話を聞いて、なるほどなぁ…と頷いた。
「はい。宇髄さんならこの辺りのことは一番詳しいかと思いまして、ご指導頂きたく……、」
「あ〜あ、かたっ苦しい。そういうのはいいんだよ。要するに何が聞きてーんだ?」
やめろと言わんばかりに手を払う動作をすると、天元は炭治郎に本題を話せと要求した。
「はい、…では。ずばり、同衾での女性の扱い方や手法。そして、その……、出来れば………長持ちする…方法とかも…、」
そう言って照れる炭治郎が、忘れては行けないとさらに言葉を付け足す。
「それと…出来れば初心者向けの…優しいのをお願いしますっ!!」
深々と頭を下げる炭治郎に、天元は呆れたように鼻を鳴らした。
「おいおい…俺様を誰だと思ってる?俺は宇髄天元様だぞ?この界隈じゃ、ド派手に名を馳せた男。
数々の童貞鬼殺隊士を継子にしてきたスペシャリスト。言わば、性を司る神だっ!」
「おおっ!!」
「この俺様がお前を立派な男にしてやるよ!!」
そう言って、ド派手にポーズを決める天元に、食い気味に目を輝かせる炭治郎。
その横で、善逸は思った。
(どこで、ド派手に名を馳せてんだよ。……性の神って、間違いなく、ヤベぇやつだよ。)