第6章 素直 後編【※錆兎】
一杯目を食べ終わり、注いでもらったおかわりを受け取ると、ふと、陽華の傍らに置いてあった鞄が目に入った。
そこには、例のガラス玉の装飾品が付いていて、錆兎はそれをもう一度見て確信すると、嬉しそうに微笑んだ。
「なぁ、それ。……俺のだろ?」
錆兎は、陽華の瞳の色、薄茶のガラス玉じゃない方を指さして、問いかけた。
「………そうよ。」
陽華が、小さく頷く。
少し青みがかった灰色のガラス玉。
鏡なんか、そんなに見ることがないから、思いつかなかったけど、陽華の気持ちを聞いたら、自分の瞳の色が、そんな色だったことを思い出した。
「義勇から話は聞いてたけど、俺の分はないと思ってた。」
「同期みんなに買ったから、錆兎の分がなかったら、虐めてるみたいじゃない。」
「でも、義勇は一つしか買ってなかったって言ってた。義勇にバレないように買ったのか?」
「ううん。全部一緒に買ったわ。……義勇には、いつか自分で渡すから、言わないでって、お願いしたの。」
そう言って、陽華がチラッと錆兎を見た。
「義勇は私の気持ち、ずっと前から知ってるから。」
その言葉に、錆兎の動きが止まった。
……な、なんだと?
じゃ、義勇の陽華の話は、仲良し自慢じゃなくて、単なる陽華の可愛さアピールだったのか?
気づくどころか、疑惑しかなかったぞ。…そんなところも、不器用なアイツらしいが。
錆兎が親友の、不器用な応援の仕方を思い出して、苦笑いを浮かべていると、陽華が咳払いをした。
「……ずっとあげれなかったけど、欲しかったらあげるけど。」
陽華がぶっきらぼうに伝えると、錆兎は二つ並んだガラス玉に、目をやった。
「いや、いい。この二つが一緒にあるのがいいから、お前に預けておく。絶対に無くすなよ?」
錆兎の言葉に、陽華は一瞬驚いた顔を見せたが、すぐに笑顔になった。
「うん、わかった。」
その笑顔が可愛すぎて、錆兎は頬が赤くなるを隠そうと、お椀に入った汁を、急いで掻き込んだ。