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(R18) kiss hug ❤︎ HQ裏夢

第53章 ❤︎ 俺のものだから返してもらうだけ 及川徹


親戚が結婚するからって呼ばれた両家の顔合わせでさ、元カノがいたらそりゃ世間は狭いよねって驚くだけだけど、それが婚約者ですなんて紹介されたら内心穏やかじゃいられないよね?







なんの運命の悪戯だろうか。集まった親族たちは皆着飾り、俺の目の前にはの料亭の豪華か食事が並び、本来なら親戚の結婚を祝いながら久々の本格的な日本料理に舌鼓を打ってたはずなのに食欲なんて一瞬で失せる、そんな状況だった。

「初めまして、夫君の婚約者の#NAME2#いちか と申します」
「初めまして、夫君の親戚の及川徹です」

周りには気づかれてないだろうけど、お互い笑顔なのに俺といちか の周りだけ氷点下かってくらいに空気は一瞬で冷え切っているのをひしひしと感じていた。

何年ぶりかのいちか はすっかり綺麗になっていて婚約者である夫君からもらったであろう指輪が左手の薬指を輝かせている。

「徹君も俺と同い年だからどこかで会ってるかもしれないよね」

何も知らない夫君が間を取り持つ。いちか の笑顔が引き攣ってるのも多分気付いていない。

「ううん、初めて会う人だよ」
「そうだね。こんな綺麗な人に会ってたらちゃんと記憶してるけど記憶にないってことは今日が初めましてだね」
「綺麗なんて…。お上手ですね」
「ま、夫君よりは少し口が上手いくらいだよ」
「徹君は海外で生活してるからそういうノリなんだろ?」
「あっちはラテンだからね。でも日本帰ってきて思うよ、やっぱり日本人の女の子がいいって。結婚式で独身の可愛い子いたら紹介してもらお」
「だったらいちか も協力してあげてよ」
「う、うん…、そうだね。いい出会いがあるといいですね」
「ありがとう。いちか ちゃん可愛いから期待しとく」

気持ちの入ってないこの乾いた会話に苦笑するしかなかった。

せめていちか との別れが綺麗に終われていたら心からの祝福を贈っていたかもしれない。夫君の横で猫を被ったようにお淑やかに笑う表情を見て心が掻き乱されたのは俺にまだいちか への気持ちが残ってるってことなんだろう。
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